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「もったいない」じゃなく、「おもしろい」に変える
また、地方に行くたびに感じることがあります。使われなくなった校舎、誰も住まなくなった古民家、雑草だけが育つ空き地——そういった場所が、どの町にもひっそりと存在している。多くの人はそれを「もったいないね」「なんとかしなきゃね」と言いながら、でもなかなか手をつけられずにいる。
そのため、そういった場所は「問題」として語られることが多いのが現実です。少子化、過疎化、財政難——重たいキーワードと一緒に報じられ、なんとなく暗いイメージだけが積み重なっていく。しかし、宿泊施設YOHAKUが向き合ってきたのは、そのまったく逆の感覚でした。
つまり、「余白があるから、おもしろいことができる」という発想です。整いすぎていない、余白のある場所だからこそ、人は想像力を働かせられる。自分たちの手で何かをつくる余地がある。そこにYOHAKUというブランドの根っこがあります。

2025年7月にオープンした宿泊施設「YOHAKU」
廃校が「遊び場」になるまで
たとえば、かつて子どもたちの声であふれていた学校が、ある日静かになる。黒板も机も残ったまま、時間だけが止まったような空間。そこに足を踏み入れたとき、不思議な感覚を覚えた人は少なくないはずです。懐かしさ、寂しさ、そしてどこかわくわくするような感じ。
実は、その「わくわく」こそがコンテンツの種なのだと私たちは考えています。廃校には、普通のホテルや施設には絶対に出せない「時間の厚み」がある。使い込まれた木の床、黒板の粉のにおい、体育館の天井の高さ——それ自体がすでに体験であり、物語です。
さらに、廃校という場には地域の人の記憶が宿っています。「ここで運動会をした」「この教室で初めて好きな人ができた」——そんな話が自然と集まってくる。だからこそ、地域の人が誇りを持って関われる場所にもなりうるのです。
「壊す」より「残す」が生む価値
加えて、遊休資産の面白さは「完成させなくていい」ところにあります。ピカピカにリノベーションして、完璧なホテルに仕上げてしまうと、その場所が持っていた固有の空気が消えてしまうことがある。むしろ、少し古くて、少しガタがきていて、でも大切に使われている——そんな「余白のある完成度」が、訪れた人の心に残ります。
なぜなら、人は「完璧なもの」よりも「自分が参加できる余地のあるもの」に愛着を感じるからです。YOHAKUが大切にしているのは、そういう場づくりの感覚です。
古民家と川と、サウナの組み合わせ
一方で、岐阜県の板取川沿いには、また別の「余白」があります。清流として名高い川、木々に囲まれた静かな土地、そしてそこに点在する古い家々。ITADORI SAUNAの公式サイトを見ていただくとわかるように、この場所では川と自然とサウナが一体となったアウトドア体験を提供しています。
そして、その舞台となっているのも、もともとは誰かが暮らし、使っていた土地です。手が加えられずにいた空間に、薪サウナを置き、川への動線をつくり、焚き火のできる場所を設ける。それだけで、「ただの川沿いの土地」が「この夏絶対に行きたい場所」に変わります。
ちなみに、サウナと自然の組み合わせは今、全国的にも大きな注目を集めています。サウナイキタイのようなサウナ専門のプラットフォームでも、アウトドアサウナや川沿いのサウナ施設への関心が急増しており、地方の自然環境そのものがコンテンツになる時代が来ています。
「何もない」を魅力に変える逆転の発想
特に地方移住や田舎への関心が高まる中で、「何もない」という言葉の意味が変わってきています。以前は「コンビニもない、娯楽もない」という意味でネガティブに使われていたこの言葉が、今では「余計なものがない、ノイズがない、静かで豊か」という意味に聞こえてきます。
だからこそ、地方の遊休資産は今この瞬間、最大のポテンシャルを持っていると言えます。都市にはないもの、チェーン店では体験できないもの——それが地方にはたくさん眠っています。YOHAKUはそこに目を向け、「余白」という言葉をブランドの名前にしました。

板取の美しい自然
地域の人と一緒につくることの意味
もちろん、遊休資産を活用するにあたって、最も大切なのは地域の人との関係です。「よそから来た人が古民家を買って、勝手にリノベして観光施設にした」という話は、どんなに素敵な場所でも、なんとなく居心地が悪い。それよりも、地元のおじいちゃんが「あの家、よかったよな」と話してくれる場所のほうが、深みがあります。
それだけでなく、地域の人が「自分たちの場所」として関わることで、コンテンツはどんどん育っていきます。地元の食材を使った料理、地域の職人がつくった小物、昔から続く行事や祭り——そういうものが自然に集まってくる場所が、本当の意味でのローカルコンテンツになる。
そして、その循環の中に宿泊者も招き入れることで、「観光」ではなく「体験」が生まれます。眺めるだけじゃなく、触れて、関わって、話して帰る。そういう旅の形が、これからの時代に求められているものだと感じています。

当店のスタッフの様子

